神経画像研究会

本研究会は、平成20年に当教室がCREST(戦略的創造研究推進事業)に採択され、昭和大学附属烏山病院に「昭和大学CREST脳画像研究センター」が設置されたことを端緒として発足しました。「脳画像研究センター」が設置される以前に、烏山病院にて成人の発達障害を対象とした専門外来・デイケアを開設し、そこに通院する外来患者の人口統計学的、症候学的なデータを解析するという基礎的な仕事から研究活動がスタートしました。平成22年からは、これら基礎的な臨床データをふまえて、機能的磁気共鳴画像(fMRI)、構造画像、拡散テンソル画像(DTI)、近赤外光脳機能イメージング装置(fNIRS)・事象関連電位(ERP)を中心とした複合的な脳画像研究をはじめました。発達障害のみならず、統合失調症、気分障害など他の精神神経疾患についての研究もおこなっています。また精神疾患研究とは別に、ヒトの高次脳機能にかかわる基礎的な研究も始めています。本格的な研究活動は開始してからまだ2年余りと短いですが、いくつものプロジェクトが進行している活気ある研究室です。

研究用MRIが常設しているという恵まれた環境を活かし、臨床と研究の緊密な連携から、精神疾患の臨床的特徴から病態の解明、診断・治療法の確立を目標とし日々研究を行っております。また、fMRIやfNIRSなどの脳機能測定装置だけでなく、経頭蓋磁気刺激(TMS)や視線方向計測器など、認知神経科学の有力な研究ツールをくみあわせて複合的な研究をおこなえるという点も、当研究チームの大きな特徴です。

構成メンバーは精神科医、神経科学・心理学・情報工学系研究者、実験補助スタッフなどです。東京大学医学部精神神経科やNTT物性科学基礎研究所とも共同研究をしており、学内外の研究者、医療・研究機関との交流は盛んです。

月1回の研究会では若手研究者を中心として各々の研究プロジェクトの進捗状況の報告の他、海外文献の抄読など行っています。研究成果は国内外の学会、論文等で発表されています。

現在進行中の研究

  • Neuromoduration及びNueroimagingの包括的研究
  • 自閉症スペクトラム障害の聴覚言語機能に関するfMRI研究
  • 自己・他者参照機能に関する自閉症スペクトラム障害のfMRI研究
  • グラフ理論を用いた自閉症スペクトラム障害の脳機能ネットワークの解析
  • 自閉症スペクトラム障害の脳形態研究
  • 統合失調症の幻聴の脳内機序に関するfMRI研究
  • 前頭・頭頂連合野に対する反復TMS効果のfMRIを用いた評定

主な業績

Iwanami, A., Okajima Y., Ota H., Tani, M., Yamada, T., Hashimoto, R., Kanai, C., Watanabe, H., Yamasue, H., Kawakubo, Y. & Kato, N.: Task dependent prefrontal dysfunction in persons with Asperger's disorder investigated with multi-channel near-infrared spectroscopy. Research in Autism Spectrum Disorders, 5: 1187 – 1193 (2011)

Ohta, H., Yamada, T., Watanabe, H., Kanai, C., Tanaka, E., Ohno, T., Takayama Y., Iwanami, A., Kato, N. & Hashimoto, R.: An fMRI Study of Reduced Perceptual Load-dependent Modulation of Task-irrelevant Activity in Adults with Autism Spectrum Conditions. Neuroimage 61(4): 1176-87 (2012)

Yamada, T., Ohta, H., Watanabe, H., Kanai, C., Tani, M., Ohno, T., Takayama, Y., Iwanami, A., Kato, N. & Hashimoto, R.: Functional Alterations in Neural Substrates of Geometric Reasoning in Adults with High-Functioning Autism. PLoS ONE 7(8): e43220 (2012)