気分障害研究会

2003年「うつ病アカデミー」を立ち上げ、現「日本うつ病学会」を設立したメンバーのうち一人が、当時の昭和大学精神医学講座主任教授上島国利先生であったことからも分かるように、昭和大学精神医学講座では以前から気分障害の臨床研究に力を注いできました。

気分障害と症候に関する研究

気分障害は主要な精神疾患の一つであるにもかかわらず、不明瞭な部分も多くあります。日々の診療における一人ひとりの症状を大切に受け取り、さらに分かることを探っています。
現在は、当昭和大学下多施設にての慢性うつ病調査や、認知症と双極性(bipolarity)など研究が進行中です。

原著論文

真田健史, 尾鷲登志美, 宍倉久里江, 塚原健介, 高塩理, 大坪天平, 三村將, 上島国利:私のカルテからー高齢で発症した躁病の1例.精神医学48(9):1029-1031, 2006

稲田隆史, 尾鷲登志美, 伊川太郎, 中込和幸, 三村将, 上島国利:右前頭葉梗塞を伴い,カプグラ症状を呈した妄想性うつ病の1例. 精神科3(3):315-320, 2003

学会発表

谷将之, 三村將, 吉益晴夫, 工藤行夫, 加藤進昌:うつ病と適応障害の背景と状況因. 外来初診患者における比較.(第105回日本精神神経学会総会、神戸、2012

清水勇人, 秋田亮, 野口賢吾, 岡島由佳, 岩波明, 高塩理, 尾鷲登志美, 谷将之, 加藤進昌:慢性うつ病の臨床的研究. 第95回 東京精神医学会, 2012,7, 東京

田中宏明,堀宏治,尾鷲登志美,田村利之,秋田亮,峯岸玄心,富岡大,谷将之,蜂須貢,小西公子,工藤行夫: アルツハイマー型認知症におけるBPSDとbipolarityの関係. 第27回日本老年精神医学会、2012/6/21-22 大宮

Hiroaki Tanaka, Toshimi Owashi, Masami Hida, Sachiko Yokoyama, Takayuki Kumata, Ikuo Kudo:A clinical study on bipolar disorder and chronic depression. Bipolar Disorders l14、Supple 1:129-129 , 5th Biennial Conference of the International society for Bipolar Disorders14-17 March 2012, Istanbul, Turkey

田中宏明, 尾鷲登志美, 岩波明, 熊田貴之, 横山佐知子, 飛田真砂美, 秋田亮, 工藤行夫, 加藤進昌:慢性うつ病に関する臨床研究-昭和大学藤が丘病院における調査.第33回日本生物学的精神医学会, 2011,5,東京

秋田亮, 野口賢吾, 鳥谷怜奈, 小久保羊介, 岡島由佳, 岩波明, 飛田真砂美, 田中宏明, 熊田貴之, 尾鷲登志美, 加藤進昌:慢性うつ病に関する臨床調査.第33回日本生物学的精神医学会, 2011,5,東京

飛田真砂美, 尾鷲登志美, 熊田貴之, 山下さおり, 小城幸乃, 工藤 行夫: 当院における初診患者の過去5年間の変遷~うつ病およびうつ状態の患者を中心とした解析と考察~. 第7回日本うつ病学会総会(金沢) プログラム・抄録集pp:147, 2010.6.11-6.12

その他

谷将之(昭和大学附属烏山病院) Kraepelin式経過表を用いた双極性障害の経過把握, 2012

NIRS(光トポグラフィ検査)を用いた気分障害の研究

現在精神科領域で先進医療として実際に臨床現場で使用されている脳機能検査に、近赤外光スペクトロスコピィNear-infrared spectroscopy (NIRS)という検査があります。一般には「光トポグラフィ検査」と呼ばれるこの検査は、精神状態の診断や評価の補助に役立ち治療の手助けになっています。

統合失調症や発達障害など多くの疾患でもNIRSの研究が行われていますが、現在最も多く有効性が認められているのがうつ病です。

この検査の最大の特徴は簡便性です。外来での20~30分程度で行うことができ身体には侵襲的な影響を与えません。その原理は、近赤外光という光を酸素飽和度モニターのように決まった時間頭部に当てて、血液中の酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの濃度から測定された値を画像化します。その間患者さんは脳機能を必要とする課題に取り組んでもらい、脳が働く際にどのようにヘモグロビンの量が変わるかというパターンをとらえます。このパターンを分類、分析して疾患の鑑別や状態評価に補助的に役立てています。

我々は昭和大学の中だけでなく多くの機関とも共同で研究を行い、うつ病の診断や他の疾患との鑑別、疾患の予後や治療反応の予測などへの有効性を検討し、またこの検査機器の適切な使用方法が臨床現場に広まるよう、日々取り組んでいます。

NIRS検査の様子

原著論文

Yamanaka K, Yamagata B, Tomioka H, Kawasaki S, Mimura M.: Transcranial magnetic stimulation of the parietal cortex facilitates spatial working memory: near-infrared spectroscopy study. Cereb Cortex. 2010 May;20(5):1037-45. Epub 2009 Aug 14.

小久保羊介,山縣文,太田晴久,富岡大,峯岸玄心,三村將 :うつ病の薬物反応性と近赤外線スペクトロスコピー所見 –反応良好群と反応不良群との比較- 昭和医会誌 2009:69(2):182-189

Tomioka H, Yamagata B, Takahashi T, Yano M, Isomura JA, Kobayashi H, Mimura M: Detection of hypofrontality in drivers with Alzheimer’s disease by near-infrared spectroscopy. Neuroscience Letters 2009; 451 (3): 252–256

Ohta H, Yamagata B, Tomioka H, Takahashi T, Yano M, Nakagome K, Mimura M.: Hypofrontality in panic disorder and major depressive disorder assessed by multi-channel near-infrared spectroscopy. Depress Anxiety. 2008;25(12):1053-9.

Yamagata B, Tomioka H, Takahashi T, Isomura JA, Kobayashi H, Mimura M: Differentiating early and late-onset depression with multichannel near-infrared spectroscopy. PSYCHOGERIATRICS 2008; 8: 79–87

学会発表

Hiroi Tomioka, Ako Yamamoto, Anjerica Junko Motoki, Hitomi Kobayashi, Bun Yamagata, Haruhisa Ota, Hiroaki Tanaka, Masaru Mimura: Comparison of the frontal function in bipolar disorder and major depressive disorder: near-infrared spectroscopy study. 5th Biennial Conference of the International Society for Bipolar Disorders, March 2012, Turkey

富岡大,岩波明,高澤知子,山本吾子,三村將: うつ病の臨床経過に関する研究:NIRS所見の経時的変化と診断変更について. 平成23年度国立精神・神経医療研究センター精神疾患の鑑別診断および転帰の予測における近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)の有用性に関する研究 研究報告会, 2011,12,東京

富岡大,山本吾子,元木順子,小林仁美,山縣文,三村將: 自動車運転時における高齢健常者およびアルツハイマー病患者の脳機能のNIRSによる検討 第33回 日本生物学的精神医学会,2011,5,東京

富岡 大,三村 將: NIRSを用いた高齢ドライバーの運転能力に関する検討 第16回 医用近赤外線分光法研究会(NIRS研究会)シンポジウム:「認知リハビリテーションにおけるfNIRSの応用」,2009,10,31,東京

富岡大,矢野円郁,山縣文,髙橋太郎,山中佳保里,磯村順子,小林仁美,三村將: 光トポグラフィを用いた前頭葉活動の検討 -作動記憶と語流暢課題の比較-第31回 日本神経心理学会総会,2007,9,27-28,金沢

Hiroi Tomioka, Taro Takahashi, Bun Yamagata, Madoka Yano, Hitomi Kobayashi, A. J. Isomura, Masaru Mimura : Driving evaluation for older adult drivers using NIRS and driving simulator. The International Neuropsychological Society, Federation of Spanish Societies of Neuropsychology, Spanish Neuropsychological Society, Spanish Psychiatry Society Joint Mid-Year Meeting, July 4-7, 2007, Bilbao, Spain

気分障害と神経内分泌研究

気分障害には、視床下部-下垂体-副腎(HPA)系というストレスにまつわる神経内分泌系が関与することが、以前から指摘されています。HPA系をはじめとした神経内分泌系指標がバイオマーカーとして気分障害の治療に役立てないかを、研究しています。

原著論文

Owashi Toshimi, Otsubo Tempei, Oshima Akihiko, Nakagome Kazuyuki, Higuchi Teruhiko, Kamijima Kunitoshi: Relationships of DEX/CRH and GHRH test results to the outcome of depression - Preliminary results suggest the GHRH test may predict relapse after discharge -" Journal of Psychiatric Research 42(5):356‐364, 2008

Owashi Toshimi, Otsubo Tempei, Oshima Akihiko, Nakagome Kazuyuki, Higuchi Teruhiko, Kamijima Kunitoshi: Longitudinal neuroendocrine changes assessed by dexamethasone/CRH and growth hormone releasing hormone tests in psychotic depression. Psychoneuroendocrinology 33(2):152-161, 2008

尾鷲登志美, 大坪天平, 大嶋明彦, 三村将, 中込和幸, 樋口輝彦, 上島国利: 健常者におけるデキサメタゾン・CRH負荷試験 −日本人におけるデキサメタゾン適正用量の検討−. 脳と精神の医学18(2): 149-155, 2007

尾鷲登志美, 大坪天平, 黒沢顕三, 内田充彦, 鳥居成夫, 三村將, 上島国利: 大うつ病性障害の入院治療転帰と甲状腺機能との関連. 精神医学49(8): 797-803, 2007

気分障害と薬物療法における研究

原著論文

青山 洋,石垣達也,熊田貴之,住吉秋次: Mirtazapineの多施設共同での実地医療における臨床的有効性・安全性の検討.臨床精神薬理14(3):‐,2011

堀宏治, 小西公子: 認知症の超高齢患者のうつ状態に対してfluvoxamineが奏効した1症例. 新薬と臨床59(1):98-100, 2010

伊川太郎, 大坪天平, 真田健史, 山本英樹, 松丸憲太郎, 村松大, 上島国利:Mianserinにparoxetineを追加した後,急速に躁転したうつ病の1例. 臨床精神薬理6(7):913-917, 2003

学会発表

Toshimi Owashi, Hiroaki Tanaka, Masami Hida, Genshin Minegishi, Toshiyuki Tamura, Sachiko Yokoyama, Ikuo Kudo: Prescription of mood stabilizers: Lithium vs valproate - what clinicians expect for them. 28th CINP (The International College of Neuropsychopharmacology) World Congress of Neuropsychopharmacology. 3-7 June 2012, Stochholm, Sweden

野口賢吾, 秋田亮, 鳥谷怜奈, 小久保羊介, 岡島由佳, 岩波明, 飛田真砂美, 田中宏明, 熊田貴之, 尾鷲登志美, 加藤進昌:慢性うつ病の薬物療法に関する臨床的研究. 第33回日本生物学的精神医学会, 2011,5,東京

山田浩樹、吉澤徹、東一成、清水勇人、大野泰正、加藤進昌、岩波明: スーパー救急病棟における気分障害の薬物療法-平成22年カルテ調査を通して-. 第9回スーパー救急研究会(2012.4月 東京)

熊田貴之,青山 洋,石垣達也,住吉秋次:デュロキセチンの多施設共同による臨床的有効性・安全性の検討.第21回日本臨床精神神経薬理学会(東京)抄録集 pp:157,2011.10.27-10.29

青山 洋,石垣達也,熊田貴之,住吉秋次: 新規抗うつ薬ミルタザピンの使用経験. 第7回日本うつ病学会総会(金沢) プログラム・抄録集pp:45, 2010.6.11-6.12

Tomioka, Hiroi; Nakagome, Kazuyuki; Matsumaru, Kentaro; Muramatsu, Dai; Owshi, Toshimi; Nakamura, Kei; Kamijima, Kunitoshi: A retrospective survey on medication of mood stabilizers against bipolar disorder.International Clinical Psychopharmacology: July 2006 - Volume 21 - Issue 4 - p A27

気分障害と臨床転帰;電気けいれん療法における研究

原著論文

尾鷲登志美, 内田充彦, 黒沢顕三, 大坪天平, 三村將, 上島国利: 電気けいれん療法を施行した大うつ病性障害患者の特徴.精神科11(2): 175-180, 2007

学会発表

伊津野拓司, 梅村絵里, 大野 泰正, 黒沢顕三: 双極性障害うつ病相に対するmECT(修正型電気けいれん療法)の実績東京精神医学会94回学術集会(東京2012)

黒沢顕三, 伊津野拓司, 加藤進昌: 双極性障害に対するアリピプラゾールの使用法試案 第9回日本うつ病学会総会(東京2012)

梅村絵里, 黒沢顕三, 押尾朋範, 大野泰正, 吉村直記, 加藤進昌: 双極性障害のうつ病相に対するECT治療と維持療東京精神医学会92回学術集会(東京2011)

大野泰正, 黒沢顕三, 山田浩樹, 中原正雄, 高山悠子, 三村將,加藤進昌: 軽うつが遷延した双極性障害に対するECTの効果東京精神医学会第90回学術集会(東京2010)