研究

薬物依存症に対する集団療法研修に参加して

2017年12月18日3:39 PM

平成29年11月13~15日に国立精神・神経医療研究センターにて開催された「第9回認知行動療法の手法を活用した薬物依存症に対する集団療法研修」(http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/training/index.html)に参加致しましたので、ご報告させて頂きます。

この研修は「薬物依存症者に対する積極的な援助ができるようになるとともに、包括的外来薬物依存症治療プログラムを実施するための基礎を身につけること」を目的としており、診療報酬の「依存症集団療法」算定における施設基準資格者養成研修にも設定されている、かなり公的な研修です。受講者が抽選で選ばれるほどの人気研修なのですが、機会を頂きまして、私のような若輩者が参加させて頂く運びとなりました。研修内容は、薬物依存者の臨床的特徴や治療、家族支援、動機づけ面接などに関する講義や、グループワークで※SMARPPを実際に行う等、かなりボリュームに富み充実したものとなっています。( http://www.ncnp.go.jp/nimh/kenshu/h29/pdf/training_17111315.pdf )

どの講義も大変に興味深いものでしたが、中でも印象に残っているのは、CRAFTに関する講義です。CRAFTとは依存症者と家族のためのプログラムで、家族など依存症者の周囲にいる人が自らのコミュニケーションの方法を変えることで患者本人を治療へ繋げることを目的としたものです。

患者の家族は心配のあまりに患者本人を叱咤したり脅したりしてなんとかして治療を受けさせようと頑張るケースが多いですが、実際にはそれは逆効果であるという内容でした。例えば、「また薬を使ったら死ぬよ!止めなさい!」と言われるより、「あなたが薬をまた使ってしまって体を壊すのではないかと私は本当に心配よ。」と言われた方が、患者は抵抗感なく家族の話を聞く気持ちになります。

様々な会話パターンを実際に隣の参加者と実践してみることで、他者とのコミュニケーションにおいて「話し方、伝え方」が如何に重要であるのかを改めて実感することができました。

今回のように院外の研修に参加するのは初めての経験でしたが、様々なフィールドでご活躍されている先生方の講義を聴いて沢山の知識を得ることができ、大変勉強になりました。今回得た知識を日常の診療の中で活かせるよう努力し、日々、精進して参りたいと思います。

入局2年目専修医

研修「第9回認知行動療法の手法を活用した薬物依存症に対する集団療法研修」
日時「平成29年11月13-15日」
会場「国立精神・神経医療研究センター」

※SMARPP
Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program
神奈川県立精神医療センターのせりがや病院にて開発された、薬物依存症を主な対象とする、認知行動療法の志向をもつ外来の治療プログラム

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World Congress On ADHD 2017

2017年10月31日4:01 PM

若手医局員にも積極的な学会参加を推奨するムードのある当医局では、毎年多くの医局員が国際学会にも参加しています。私は、平成29年4月20~23日にカナダのバンクーバーで行われた「World Congress On ADHD 2017」に参加してまいりました。

事のおこりは2016年の冬。教授より「来年のバンクーバーはどうかね」と言われたのが始まりでした。私は成人期ADHDについて研究をしておりますが、その時はなかなかすっきりした結果がでない状況でした。しかし何とかAbstractを作成して申込み。その後は、教授の御指導のもと、研究をすすめつつ発表内容を検討しました。そして、あっという間に4月がやってきました。教授が筆頭(引率?)で、私を含め他のDrは若手ばかりですが、いざカナダへ!

開催地となったバンクーバーは、日本とは時差14時間、カナダで3番目の大都市です。日本から直行便で8時間40分。バンクーバー国際空港から車で20分。国際会議場のある「カナダ・プレイス」は、東京のような高層ビルが立ち並ぶ場所にありながらも、バラード入江という海に面し、眼前にはフェリーやタンカー、水上飛行機までが行き交い、しかも遠くには冠雪を頂く山々が見えるという、綺麗な場所でした。

入り江に面したカナダ・プレイス

会場では、自分のポスターを貼ったら、既に貼ってあるポスターや発表を見て回りました。ポスターではDasotralineのような新しい薬の研究報告、講演では、リアルタイムfMRIを用いたニューロフィードバックのトレーニングや、ビッグデータを用いたデータ解析についての紹介などが個人的に興味深いところでした。

ですが、今回のお仕事は、見るばかりでなく自分達も発表をすること。Poster Tourの司会のDrが回ってきます。あ、ドキドキする…まずいな…でも、もう考えない…

「はい皆さんこんにちは。日本からやってきました。私の研究を聴いて下さい…」…ぶっつけTalkが始まります。そして質疑応答。結論から言うと、みなさんやさしい。温かい目で見てくれました。分かり易く話してくれます。一人だけ早口なDrが居ましたが、司会の先生が「この人はこう言っているんだよ」と説明までしてくれました。言語が未熟なら大きな声と勢いでという教訓を得ました。冷や汗をかきながらお仕事終了です。

全員が、お仕事終了した後は、発表後は地元の海鮮料理レストランで、生ガキやエビ、サーモンのピザ、ムール貝など色々頂きました。

観光では、バンクーバー発祥の地とされる、ギャスタウンというところを散策しました。ギャスタウンは19世紀の雰囲気を残す街で、蒸気で動く時計台や、コロシアムのような変わった外観の中央図書館などをみました。バンクーバーで人気の550feetの高さにある展望デッキ「バンクーバールックアウト」に登ったり、バンクーバー美術館で、カナダの誇る女性画家エミリーカーの常設展と、アジアのコンテンポラリーアート作家とのコラボレーション展示などを見学しました。

さて、楽しかった学会も終わり、帰国して振り返ると、日常の業務の中での学会参加は中々大変な事ではありました。毎日、自分の足元を見るだけで大変なのに、半年以上先のプランを立てなくてはいけません。しかし、何もしなければ、日々の業務ですり減るだけで、向上することはできないでしょう。やはりこういう機会を与えて頂けるのはとても有り難いことと感じました。先輩の先生方に感謝をしつつ、自身の向上をめざし、後輩の先生方にも同様な学びをして貰えるよう尽力したいと考えます。

入局5年目医局員

学会「World Congress On ADHD 2017」
日時「平成29年4月20~23日」
会場「バンクーバー国際会議場」(カナダ連邦、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー市)
演題「Assessing attentional functions in adults with ADHD」

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海外学会 CINP thematic meetingに参加して

2017年10月10日11:23 AM

平成29年7月20日から22日、プラハで行われた「The International College of Neuropsychopharmacology thematic meeting」 (http://cinp.org/prague/) へ参加致しました。この学術集会へは当医局から5名で参加し、2題のポスター発表を行いました。私が発表した内容は、睡眠薬であるスボレキサントを長期服用している烏山病院の入院患者及び外来患者480名に対して調査を行ったものでした。通常の病棟業務を行いつつ、カルテ記録の調査、統計解析、ポスター作製までを行いましたので、直前は忙しく感じることもありました。ですが、上級医の先生の御指導を頂き、完成させることが出来ました。

今回のCINPはthematic meeting(テーマ別会合)であり、うつ病に関連した発表と内容が指定されていたためか、世界的な学術集会としては規模が小さく、会場も一か所のみだったので少し驚きました。日本からの参加も私達だけでした。ですが、私の発表であるスボレキサントは、日本以外では未発売の薬剤であるため、海外の方々には興味を持って頂けました。

他の発表者は様々な国の病院や大学から参加しており、皆で様々なポスターの英語を読みながら見て回るのはとても面白かったです。ポスターの書き方もそれぞれの国で特徴があり興味深いと思いました。また、同世代の海外の方が発表をしに来ているのを見ると、とても刺激を受けました。

ヴルタヴァ川(モルダウ川)に架かるプラハ最古の石橋、カレ
ル橋

学術集会が終った後の時間は、皆でプラハの街を散策しました。プラハ歴史地区は、世界遺産に登録されていて、プラハ城やカレル橋など何処を歩いても美しい建物が並んでいました。またご飯もおいしく、ビールも安く、普段一緒に仕事をしていない先生方とも親睦を深めることが出来て、とても有意義な時間となりました。

このような機会を与えて下さった先生方には、大変感謝しております。今回の経験を今後の臨床、研究に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

 

入局4年目専修医

 

学会「The International College of Neuropsychopharmacology thematic meeting」
日時「平成29年7月20日~22日」
会場「Grandior Hotel,Prague(チェコ共和国、プラハ市)」
演題「Investigation on long-term oral administration of Suvorexant.」

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どの学年が参加しても多くの知識を習得できる~日本精神神経医学会学術総会

2017年8月7日6:49 PM

平成29年6月22日~24日にかけて名古屋国際会議場で開催された第113回日本精神神経医学会学術総会(https://www.congre.co.jp/jspn113/) に参加させていただきました。今回は何人かの後輩の共同演者という立場で直接の発表はしなかったものの、3日間通して参加させていただくことができ大変勉強になりました。

本学術総会は精神科の学会の中でも最も規模の大きい学会であり、精神科の全ジャンルが集まる学会です。普段の時期に行われる外部の勉強会は製薬会社主体ということもあり、どうしても薬物療法関係のジャンルが多くなってしまいがちですが、本学会においてはそういった偏りはなく参加する機会の少ない非薬物的療法、リエゾンコンサルテーション医療、社会支援、実用化にはいたっていない最先端の治療のシンポジウムなども充実しています。聞きたい演題が多く、気づいたら3日間とも朝一から終会まで学会会場に詰めていました。難点は興味深い演題が多いがゆえに時間帯が重なってしまうことも多くどちらのセッションにでるか迷うこと、どちらも少しずつ聞こうと思っても会場が広いため移動に時間がかかって面倒なこと、人気のある会場は人が多すぎて立ち見でつらい、ということなどでしょうか。

学会のにぎわい

私は入局間もないころ、「学会というものは専門性が高く難解な話題ばかりが議論される場所。特に大規模な学会になればなるほど精神科の門をくぐったばかりの自分のような者が参加しても理解できないに違いない」という勝手な思い込みがあり、小規模な学会でささやかな発表をするばかりで、精神神経学会に参加するようになったのは恥ずかしながら専門医を取得した後でした。しかし実際は、専門医取得を目指す医師向けのプログラムや、学会を機に普段なじみのない分野の知見を広める目的にも対応しているプログラムも多く、どの学年が参加しても多くの知識を習得できる場所です。今回の学会では後輩たちが立派に発表しているだけでなく、抄録集を片手に自分たちが聴きたい講演を熱心のまわっている姿もみることができとても頼もしく思いました。

入局8年目 専門医

学会「第113回日本精神神経医学会学術総会」
日時「平成29年6月22日~24日」
会場「名古屋国際会議場」

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発達障害精査入院についての口頭発表~日本精神神経医学会学術総会

2017年8月7日6:49 PM

この度、愛知県名古屋市で行われた「第113回日本精神神経学会学術総会」(https://www.congre.co.jp/jspn113/)にて生まれて初めての口頭での学会発表をさせていただきました。

成人発達障害の診療で烏山病院は知られておりますが、当院では発達障害の精査入院(診断、検査などを2週間かけて行う入院)を実施しており、これも当院のウリの1つになっております。私は、入局してからの1年間、微力ながらもこれに携わらせていただいておりました。発達障害なるものを当初何も知らなかった私なのですが、上級医、コメディカルのスタッフの方々に懇切丁寧にご指導いただき、貴重な学びの経験をさせていただいております。今回は、この発達障害精査入院についてカルテ調査を行い、患者さんの背景についてまとめたものを口頭発表することになりました。

実は、昨年の第5回日本精神科医学学術大会でも同様な内容について発表を行っていたため、発表の準備を始める前は「それをベースに発表するだけ…」とタカをくくっていたのが正直なところです。ところが、実際に準備を始めると、プレゼン用のパワーポイントを新たに作成したり、新規データに対し考察を加えなくてはならなかったりと、想定以上に準備に難渋してしまいました。しかし、上級医の先生方にご意見を仰いだり、予演会で資料の編集のやり方、考察などに更なる御指摘・ご指導を受けるなど多くの助力を頂き、何とか完成度を高めて準備を終えることが出来ました。上級医の先生方には本当に感謝しております。本当に本当に感謝しております。本当です。

発表当日を迎え、名古屋の学会会場に着くと、改めてその規模に驚きました。日本の精神医療の中でも屈指の大きな学会であることは分かっていたつもりでしたが、発表が近づくと不安と緊張が高まり、原稿と缶コーヒーを手に意味もなく会場内を徘徊してしまうほどでした。

しかも、発達障害という大きなトピックスを扱うセクションだったためでしょうか。私の発表会場には、非常に多くの方々がつめ掛けていました。「半人前にも満たない私の発表なのに…」と、不安と緊張が極限に達してしまいました。おかげで発表の最中のことはほぼ記憶にありません。いくつか質問も頂いたのですが、とにかく何かをしゃべっていたというおぼろげな記憶しかありませんでした。

発達障害の発表会場は、床に座り込む人が出るほど

そのような呈で何とか自分の発表を終えましたが、そのあとは落ち着いて、様々な講演を拝聴させていただきました。大変貴重な勉強を沢山することができました。学会ならではの大きな楽しみだと思います。夜は医局の先生方と食事会をし、普段はなかなかお話できない、沢山の先生方と地元の名物や真面目な話やらふざけた話やらをして大いに盛り上がり、親睦を深められたかなと思います。これもまた学会の大きな楽しみです。

今回の体験を振り返ると、私のように経験が薄い者にも大きな学会での発表の機会をいただけた事、また優しく懇切丁寧に指導をいただくことができた事、そして、多くの上級医の先生方と親睦を深められた事、本当に感謝の念にたえません。そして、学会は日々の臨床に役立つような様々な知識を吸収出来る貴重な機会でもある事も実感できました。この体験で得たものを実臨床に生かしてより多くの患者さんに還元したいと思います。これからも日々精進していこうと思います。

入局2年目専修医

学会「第113回日本精神神経医学会学術総会」
日時「平成29年6月22日~24日」
会場「名古屋国際会議場」
演題「成人発達障害精査入院プログラムに参加された患者の特徴と診断結果」

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