卒前教育

卒然教育は昭和大学に所属する医学部学生を対象とした教育のことです。
6年間かけてさまざまな分野の勉強をしていきますが、医師になるためには医師免許が必要です。その医師免許取得のために、医師国家試験の受験資格である医学部卒業とその試験の合格を目指す期間の教育に携わっています。
精神科の卒前教育プログラムには、内科や外科の知識と同様に精神科の知識を身につける講義や、実際に精神科診療がどのように行なわれているかを肌で感じる臨床実習などがあります。

医学部講義

【医学部3年生・後期】医療面接・医師と患者

精神科は講義2コマ、演習2コマ(計4コマ)を担当します。

一般目標(GIO)

臨床実習で適切な医療面接を行なうために、医療面接に必要な要素を理解し、コミュニケーションスキルを取得する。

行動目標(SBOS)

  1. コミュニケーションの必要性を列記できる。
  2. コミュニケーションスキルの種類と特徴を列記できる。
  3. 医療面接における良好な患者-医師関係を構築できる。
  4. 医療面接の進め方を列記できる。
  5. 医療面接の内容や構成要素を列記できる。

評価方法・評価基準

授業中の態度・参加・発表・レポート等で評価する。

【医学部4年生・前期】臨床医学コース 精神医学ユニット

平成17年より、新たに医学教育モデルコア・カリキュラム(教育内容ガイドライン)に基づいて講義内容が刷新されました。
以下のように、計13コマを担当します。

年月日 曜日 時限 学習項目 学習内容 担当氏名
1 26.6.27 3 精神症候学概論/精神科診断学 精神症状一般、面接法、心理検査、理学・生理学的検査など 岩波 明
2 26.6.27 4 パ-ソナリティ障害/習慣および衝動の障害/精神科治療学(1) 疫学、病因論、症状、病型、経過、予後、治療/精神療法、リハビリテ-ション 岡島 由佳
3 26.6.30 3 脳器質性精神障害(認知症を含む)/症状精神病 定義、原因、分類、症状、経過、治療、予後、神経心理学的検査法 堀 宏治
4 26.7.1 3 統合失調症 疫学、病因論、症状、病型、経過、予後、治療 稲本 淳子
5 26.7.1 4 物質関連障害 概念、発生機序、類型、経過、予後、社会的背景 小山田 静枝
6 26.7.2 3 てんかん/睡眠・覚醒障害 概念、疫学、病因論、発作型、症候群、治療、予後 吉益 晴夫
7 26.7.3 3 気分障害 疫学、病因論、症状、病型、経過、予後、治療 尾鷲 登志美
8 26.7.3 4 児童・青年期の精神障害 概念、分類、治療、被虐待児症候群、精神遅滞、児童・思春期心性など 古荘 純一
9 26.7.4 3 神経症関連障害/摂食障害 概念、分類、発生機序、社会文化的背景、予後、治療 高塩 理
10 26.7.4 4 精神科治療学(2) 薬物療法、その他の生物学的治療法など 山田 光彦
11 26.7.8 3 精神医学と社会との関連 精神障害者の処遇と法規、司法精神医学 金川 英雄

一般目標(GIO)

  1. 精神症状学・診断学・治療学についての知識を得る。
  2. 他科との連携における精神医学の位置付けを理解する。
  3. 精神医学と社会との関連について理解する。

行動目標(SBOS)

  1. 精神医学的面接の留意点について概説できる。
  2. 精神科の治療法について列挙し、説明できる。
  3. 統合失調症について説明できる。
  4. 気分障害について説明できる。
  5. 脳器質性精神障害について説明できる。
  6. 症状精神病について説明できる。
  7. コンサルテーション・リエゾン精神医学における精神科医の役割を列挙できる。
  8. 物質関連障害について説明できる。
  9. 認知症(痴呆性疾患)について説明できる。
  10. 児童・青年期の精神障害について説明できる。
  11. 神経症関連障害について説明できる。
  12. パーソナリティ障害について説明できる。
  13. 精神保健福祉法について概説できる。

評価方法・評価基準

学期末に筆記試験で総括的評価を行う。また、適宜、形成的評価を行うことがある。

教科書・指定図書・参考書

種別 図書名 著者名 出版社名 発行年
参考書 TEXT精神医学 (改訂3版) 加藤進昌、神庭重信 編 南山堂 2007年

【医学部5年生】臨床講義

土曜1時限(9:00~10:30)に、計50コマが実施され、そのうち精神科は講義2コマを担当。

【医学部5年生】総合講義

土曜2時限(10:40~12:10)に、計20コマが実施され、そのうち精神科は講義2コマを担当。
これは複数の科(主担当科、副担当科)の講師により総合的な理解を目指しています。

【医学部6年生】集中講義

医師国家試験を念頭においた集中講義(3コマ)を実施。

精神医学臨床実習

医学部4年生 チュートリアル

全53回コマが実施されます。

コア・カリキュラムの「症候・病態からのアプローチ」での症候・病態を対象として、3症例を5班毎(全15班)に振り分けてチュートリアルを行います。
初日の1時限目に症例の提示があり、各班で少人数討議、自学自習を行います。
担当者は症例を提示するとともに、最終日の各班での検討結果発表を開き、症例解説の時に責任を持って症例の解説を行います(各症例30分程度)。
チューターは各担当者が各2名ずつを手配し、残りは全教室に振り分けます。
当教室からも、5名がチューターとして参加しています。

医学部5年生 臨床実習

前半の1週間は東病院もしくは藤が丘病院・北部病院での実習。
後半の1週間は烏山病院での実習。

医学部6年生 臨床実習

選択実習として、希望の科で臨床実習を行ないます。
各科での臨床実習期間は平成18年4月~6月までの12週間で、一単位4週間。
実習が医学部5年生臨床実習よりも長期になり、実習内容も「参加型」のものが期待されています。

OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床評価試験)

平成17年度から、共用試験としてCBT(Computer Based Testing)と共に、OSCEが実施されている。

OSCEとは・・・

【OSCEの歴史】

SCE(オスキー)は、1975年に英国のHarden,R.らによって開発された臨床能力を客観的に評価する方法(実技試験)です。
筆記試験では知識や理解の程度を評価することはできますが、診察や検査などの技能、態度や習慣などの人間性を評価することはできません。
OSCEはその点を補う評価方法として注目を集めました。医学教育の名だたる先進国であるカナダで1992年に医師国家試験に採用されて以来、欧米のみならず世界各国で医師国家試験に採用されるようになりました。
本邦では1994年に川崎医科大学で初めて実施されました。
数年前までは平成17年度医師国家試験からのOSCE導入が検討されていましたが、後述の共用試験に組み込まれることになりました。
そのため、現在では国内のほとんどの医学部で実施されるようになっています。
当大学では1998年に医学部5年生を対象に初めて実施され、国内の大学としては14番目の実施校となりました。
以来、毎年、実施されていますが、平成15年度からは、医学部4年生には形成評価(フィードバックを目的とし、進級如何は決定されない)、5年生には総括評価(進級如何を含む最終評価)を行うようになっていましたが、共用試験の導入に伴い、平成17年度からは医学部4年生に対しても総括評価がなされることになります。

【OSCEの方法】

ステーションと呼ばれる小部屋が用意され、 それぞれのステーションで臨床能力を評価するための種々の課題が出されます。
受験者は合図は合図に従って順にステーションをまわって課題に取り組みます。
各ステーションの持ち時間は5分(医療面接のみ10分)で、最後の1分間は立ち会っている評価者のフィードバックが行われます。
途中にはレイト・ステーション(待機室)と呼ばれる休憩室が適宜はさまります。
OSCEの実施場所としてよく用いられているのは大学病院の外来診察室、体育館、セミナー室などです。配置されるステーションの例としては、医療面接、バイタルサイン、救急蘇生(心臓蘇生・気管支挿管)、胸部診察(心臓の聴診・胸部聴打診)、胸部X線写真撮影、胸部診察、脳神経の診察(神経学的所見)、小外科基本手技(ガウンテクニック・縫合・抜糸)、眼底検査などがあります。
カナダの国家試験は20ステーションで実施されており、海外の医師国家試験では15ステーション以上が配置される大規模なものも少なくありません。
医療面接では模擬検査(Standardized Patient:SP)と呼ばれる専門のボランティアは俳優を相手にインタビューを行います。
学生への評価とフィードバックは立ち会った評価者以外に、SP(エスピー)さんからも行われます。

共用試験とは・・・

【共用試験導入の経緯】

従来の医学部臨床実習はいわゆる「見学型」と呼ばれるような、患者さんの診察や検査を行う実習され難いものでした。
しかし、医学教育が知識偏重であるとのそしりを受けるようになり、海外の動向を鑑みて、本邦の臨床実習も「診療参加型」のクリニカル・クラークシップへの移行が検討されるようになりました。
そして、そのためには、臨床実習前の学生がその実習に相応しい知識・技能・態度を身に付けているかどうかを評価する必要性が出てきました。
それが臨床実習前に一斉に実施される全国の医学生を対象とした共用試験です。
平成17年度の4年生終了時に実施されることが決定しています。

【共用試験とは何か】

共用試験は、コンピューターを用いた知識・問題解決能力を評価する客観試験(Computer Based Testing:CBT)と、OSCEとから構成されています。
筆記試験の問題作成にあたっては、共通基準を設けた組織的評価を行うために「モデル・コア・カリキュラム」が形成され、これに基づいて、全国各大学から公募問題が約1万題以上プールされており、ブラッシュアップされています。
「モデル・コア・カリキュラム」とは、医学生に対するminimal requirementで、医学生が身につけておくべき普遍的な医学的知識・技術・態度の基本的教育内容ガイドラインとして、平成13年3月に「医学における教育プログラム研究・開発事業」委員会からの提示されたものです。
CBTコンピューターを活用し、プール問題から無作為に設問を選択する試験で、多肢選択式(Multiple choice question)で実施されます。
OSCEはあらかじめ設定された20程度の課題から5題程度が選択されて実施される予定です。
OSCE評価者には他大学の教員も加わることになっています。
共用試練の「共用」とはこの意味で各大学の「資産」を「共用」するという意味合いが含まれています。
一昨年度から外部評価者認定講習会が開催されております。
精神科では平島助教授が「医療面接」について外部評価者の認定を受け。必要に応じて他大学での共用試験に評価者として参加する予定です。

チュートリアル Tutorialとは・・・

【講義型からチュートリアル型教育へ】

従来の講義型(知識詰め込み式の教育)が見直され、知識を想起するだけではなく、学んだ知識を用いて問題を解釈し解決へと導くことができる教育方法が求められた結果、少人数による自主学習システム(チュートリアル)が着目されてきました。
既に国内では岐阜大学、三重大学、東京女子医科大学などで実施されていますが、昭和大学では去年度から始まった新カリキュラムから導入されることになりました。
チュートリアル型教育にはチューター依存型と、シナリオ依存型がありますが、昭和大学では後者の方式をとり、チューターの助けをあまり借りなくても学生が問題解決にたどりつけるように、シナリオ作成を重視しています。

チューターの役割

チュートリアル学習に慣れていない学生に・・・

  • 問題の切り口、発想の仕方(自分の興味や疑問を発言させる)、調べ方(時点、インターネット、教科書など)を積極的に教える
  • 間違った意見を言っている学生には、話の流れをしばらくみてから「他の考え方はないだろうか」と尋ねる
  • 黙っていて「お客さん」状態の学生には「君がおもしろいと思うところは?」「どこがわからなかった?」などと声かけをする