体験記

研修医体験記(2)

2015年7月16日3:42 PM

後期研修を振り返って

昭和大学精神医学教室
平成21年度入局

他院での初期研修を終え、平成21年に入局し気付けば丸6年が経ちました。精神保健指定医、専門医の資格を取得し2年程働いた今、入局してからを振り返るのには良い時期かもしれません。そんなわけで、6年間をざっと振り返りたいと思うので、お時間のある方はお付き合いください。

入局してからの半年間は烏山病院の急性期病棟に配属になりました。「入局してから教わればいいや」と妙に前向き(?)な気持ちで、特段準備もせず入局した私に、指導医の先生は懇切丁寧に1から教えてくださいました。従来のウッカリを存分に発揮し、数えきれない失敗を指導医の前では披露しましたが、決して怒ることなく笑ってネタにしてくださり、明るく楽しく研修をすることができました。概ね毎日入院があり、複数入院をうける日も多く、今考えると一般的な病院よりはるかに忙しい日々でしたが、一つ一つが面白く大変さは感じませんでした。烏山病院の特筆すべきことは、大学病院としての側面と同時に歴史ある精神科病院であるため、受けられる症例の幅が非常に広いということです。(通常の大学病院では経験しないような濃厚な病歴の方も沢山!)1年次の後半は認知症病棟の配属でした。効率の良い問診・診察手順、処遇のつけ方、介護で疲弊した家族のケアなど、認知症診療の基本をいつの間にか身につけており、その後の外来、リエゾンなどで認知症患者さんと接する機会も多くありましたが、スムーズに対応することができました。

2年次は、精神科は外来・リエゾンのみの藤ヶ丘病院に異動になりました。3次救急まで担う急性期総合病院ですが、徒歩1分の場所にリハビリテーションに特化した附属病院もあり、急性期、亜急性期の身体合併症患者さんをフォローすることができる大学病院ではちょっとめずらしい環境です。3次救急には精神科関連の患者さんの搬送も多く、またリハビリの中で抑うつ的になる方もおり、ここでしかできない体験も多くありました。外来もリエゾンも初めての私に、指導医の先生方はさりげなく私の担当患者のカルテをチェックして丁寧に指導してくださり、少人数体制でしたが安心して研修することができました。快くご自分の初診や再診に陪席させてくださったお陰で、なんとかかんとか私の外来も形になりました。学会発表に及び腰だった私ですが、当時の藤ヶ丘の講師の先生と働くうちに、国際学会に一緒に行きたくなり、プラハの国際学会で発表することができました。プラハ滞在中の多くは楽しい観光で、6月という日の長い良い時期に、初めての中欧を満喫したことは言うまでもありません…。

3年次から3年間は北部病院に配属になり精神科急性期病棟・認知症病棟を1年半ずつ担当しました。地域や病院の特性により集まる患者さんの特徴は全く異なるということを実感しました。北部病院は近隣の病院で上手くいかなかった難治性の気分障害の方が多いのですが、経験豊かな病棟長、班長の指導の下に治療を行うと不思議とうまくいきました。総合病院故、他科との連携を要するケースも多く、特に昭和大学は産婦人科が活発なため精神科合併症妊婦の受け入れは積極的に行っていました。緩和ケアチームに参加した時期もあり、気付けば緩和ケア講習会の指導医の資格を取得していました。
また北部病院は院内で措置鑑定を行うため、実際に指定医がどのように診察し措置鑑定を行うかを目の当たりにできます。指定医は自分が鑑定を行ったケースのその後を確認することもでき、指定医取得前後両者の医師にとってメリットといえると思います。

6年次で烏山病院に戻り、ストレスケア病棟で通常の任意入院に加えて発達障害検査入院、アルコール教育入院なども担当し、新たな分野を勉強する機会を得ました。7年次からはスーパー救急病棟に異動の予定です。

あっという間の6年間でしたが、気付けばバラエティーに富んだ研修内容となっていました。そういえば、専門医の試験でリエゾンや緩和ケア、地域医療についての設問や研修実績を問われましたが、上記のような研修や、業務の一環で保健所の医療相談なども行っていたので特段苦労もしませんでした。
今だから言えることですが(当時もちょっと愚痴っていたかも?)、入局2年目で精神科病棟のない病院への配属は、時期尚早ではと不安でした。人事は個人の希望が重視されますが、その時々の巡り会わせの要素もあります。そのため、自分が思い描いていた研修順序と異なる場合もあるのが正直なところです。これは当医局に限った話ではなく、社会人である以上はどこでもある話だと思います。しかし、この6年を振り返って思うのは「ハズレはない」ということです。どこに配属になっても、そこでしか得られないもの・教わることは多く、もっと居たいと思うことばかりでした。私の漠然とした目標は「バランスの良い臨床能力を持った医者」であり、バリバリの研究者になることでも、教授をめざす(笑)ことでもありません。しかし、精神保健指定医や専門医の資格を取得した後も、すぐには大学を離れたいと思わないのは、ここで学べること、経験できることがまだまだ沢山あり日々面白いから、だと思います。

駄文となってしまいましたが、以上が入局してからの正直な日々であり、感想です。
もし興味を持っていただけたなら、百聞は一見に如かず! 是非、気軽に見学にお越しください。